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引力からの脱出速度

自営業で失敗した洋食屋のせがれの独立志向

「宰相のインテリジェンス: 9・11から3・11へ」手嶋龍一

前髪の髪型がいつも気になる手嶋氏の本を初めて読んでみた。

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きっかけは日本企業によく見られる「結果が出ないなら、もっと頑張れ」という思考法への問題意識で、もともとは日本軍の意思決定について興味があった。

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇」「 失敗の本質―日本軍の組織論的研究」 「情報と国家―収集・分析・評価の落とし穴」までをAmazonでクリックしたところで、「読みたいリスト」からこの本のタイトルを見つけた。

 

宰相のインテリジェンス: 9・11から3・11へ (新潮文庫)

宰相のインテリジェンス: 9・11から3・11へ (新潮文庫)

 

 

米国の同時多発テロ、そこへとつながる中東戦争、そして福島原発事故といった近年の大事件を「インテリジェンス」という切り口で改めてなぞる本書、ノンフィクションながら物語の形式をとっているので一気に読めた。

前半は米国ブッシュ政権下のインテリジェンスコミュニティが如何に情報の中立性を失い、恣意的な報告で米国を戦争に駆り立てたか、ということが描かれているが、後半の日本批判では、それ以前の問題として、インテリジェンスの欠如、ひいては「意思決定機能の退行」を徹底的に批判している。さらっと読めば控えめな筆致だが、実名を挙げての淡々とした批判は逆に痛烈。

執筆のタイミング的にオバマ大統領や安倍首相の実務に対する検証が不足なのは致し方ないとして、今時点の手嶋氏の評価はどうなのだろうか? 非常に興味が惹かれる。

私なりにまとめれば、インテリジェンス(意思決定に有用な情報そのものと、それを収集分析する仕組みや人員、さらに不足したピースをどのように補完するかの知恵・・・と理解している)後進国の日本が組織や法整備を進めるのは大事な事だと思うが、本書のメッセージは「意思決定の重要性と責任に対して真摯なリーダーのところにしか情報は集まらない」というものだった。

・情報は組織下位層に「出せ」と命じて出てくるものではない
・リーダーが「胸の内」(欲しい情報)を悟られた時点で、上位には歪曲された情報しか上がってこない
・非公式でダイレクトな現場とのコンタクトが無ければ意思決定者は手持ちのインテリジェンスの精度を担保できない

望ましいインテリジェンスを体現していた人物としてチャーチル元イギリス首相の記述が短いながらも痛快な描写で紹介されていたのがとても印象深かった。

 

ちなみに映画『フェア・ゲーム』や『ゼロ・ダーク・サーティー』、『ハート・ロッカー』を観た事がある方にはめちゃくちゃ臨場感のある本。

 

フェア・ゲーム [DVD]

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ゼロ・ダーク・サーティ スペシャル・プライス [DVD]

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ハート・ロッカー [DVD]

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ジャーヘッド [DVD]

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大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)

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失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

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情報と国家―収集・分析・評価の落とし穴 (講談社現代新書)

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