引力からの脱出速度

自営業で失敗した洋食屋のせがれの独立志向

『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』松尾匡

訳あって敢えて止めていた読書再開です。
どういういきさつで購入したのか忘れましたが、政局・経済情勢を見るとなかなかタイムリーな内容なので積ん読からこれを選びました。

経済学における大きな二つの流派が現在はどのようなスタンスを取って政治につながっているか、そしてそのどちらもが経済の変遷の本質を見誤ったことで間違ったポジショニングを取っている事を分析した内容です。

私は経済には全く疎いですが、これは面白かった!

著者の主張は、「リスク、決定、責任は同じとろこにないと、無責任かつ恣意的な自己拡張の歯止めが効かない」というもので、序盤に「そごう問題」が例に引かれていますが、経営やリーダーシップに関する深い洞察があります。

また、政府の役割を「人々の予想を確定させるルールキーパー」であるべきと説き、裁量的なマネジメントへの介入は細かなニーズを無視する事になるので後方支援に徹し、民間及び個人の意思決定が「望ましい方向への均衡する」よう振る舞うべきだというところは、そのまま企業運営に活かされる内容で、私が影響を受けたスティーブン・R・コヴィー氏の「リーダーシップとマネジメントの分離」にもつながる主張なので納得性が高かったです。

個人的に特に興味深かったのは、失われた10年と呼ばれた不況と、戦後の終身雇用・年功序列・企業特殊技能優先のキャリアパスについてゲーム理論ナッシュ均衡を使って分析をするところ。

不況については、ポール・グルーグマンの言う「割に合わない円高がまねいたもの」と藻谷 浩介氏の言う「人口減少が招いた定常的経済成長ステージ」というのが私の主な理解だったのですが、著者はそれを「人災」だと断じています。

また、日本の労使構造については『痛快!経済学 2』で中谷巌氏が説明してた政府主導の政策的な性格が強いと理解していましたが、労使が「同じ手」を使うならば複数ある「ナッシュ均衡」の一つとしてごく自然な状態であるというのは目から鱗でした。

ただ、企業競争や企業そのものがグローバル化していく過程でゲームのルールが変っていっているので、汎用技能の担い手としてしかホワイトカラーを雇えなくなってきている日本という指摘は身につまされます。

 

最後に、マネタリストの尖兵として、「日本を実験台にしやがって!」と誤解していたポール・クルーグマンさん、ごめんなさい。

 

#読書メモ #本

 

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?--数千年に一度の経済と歴史の話

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痛快!経済学 (2)

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